3 高齢者の雇用が現在の国民的な課題であるとしたら、どのような問題や個々の課題がでてくるだろうか。
 とりあえず現在の企業が抱えているきわめて今日的な難題である、『金融危機」による雇用調整の問題は置いておこう。問題をより純粋な形で見るために必要な措置である。この問題を入れると、見えてくるものもはっきりしなくなる恐れがあるからである。もちろん無視はできないので後から論議の対象になろう。
 そこで問題を考えるための基本前提から確認しよう。
 (1)高齢者が必要としているのは単なる時間つぶしの、暇つぶしのアルバイトではなく、制度的に保障された雇用であり、60歳までの正規常用雇用と同じではなくとも、一定の技能に対する一定の評価を踏まえた報酬である。とはいっても雇用形態は現実的にはパートタイムに近いものしか望み得ないであろう。
 (2)企業はメンバーシップ契約を基本とする従来の日本型雇用をとるかぎり、ある職務にたいする社会的に正当な報酬を非正規雇用に支払おうとはしない。せいぜい需給関係によっていくらかのプラスのついた時間給しかださないであろう。
 (3)行政は高齢者雇用に対しては現在ほとんど無策である。ハローワークによる仕事の斡旋は若年や中年までのそれであってもうまくいっていない。いわんや高齢者の雇用に対応できているはずはない。各自治体のシルバー人材センターは高齢者の雇用に対応するものではあるが、行われているのは草刈や庭掃除などの比較的雑用労働に近い仕事の斡旋であり、センターに集まる多様な人材の要求を満たすものとは程遠い。それでも地元の企業と仕事を求めて競合する側面も見られる。当然センターがより高度の斡旋機能を果たすようになれば、大きな問題となる。
 こうした現実に立って課題を整理していかなくてはならない。